当社では、女性の派遣労働者を使用していますが、最近、同じ職場の男性社員がセクハラ行為を繰り返しているといううわさが流れています。
派遣労働者に対するセクハラ防止義務は、派遣元・先のどちらにあるのでしょうか。
【東京 S社】
均等法にセクハラ防止が明記される以前から、セクハラ被害を訴える裁判例は多数ありました。
セクハラで企業責任が問われる場合、民法715条(使用者責任)や民法415条(債務不履行)が適用されています。
使用者責任は「選任監督上の注意を尽くしていない」、債務不履行は「職場環境整備義務・調整義務を果たしていない」点が会社側の落ち度として追及されます。
ですから、相手が派遣社員だろうが関係なく、自社社員がセクハラ行為に及ばないようにするのは、企業の当然の責務です。
ところが、均等法のセクハラ防止義務は、法文上、「雇用する女性労働者(略)の就業環境が害されることのないように必要な配慮をしなければならない」と書かれているので、疑問が生じたのだと思います。
しかし、指揮管理およびそれに伴う管理を行っているのは派遣先企業なので、セクハラが生じた場合の対応について派遣法第47条の2で「労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、均等法第3章の規定を適用する」と定め、さらに「派遣先の事業主においてもセクハラ指針に基づき必要な配慮をしなければならない」(平11・11・17女発第324号)という行政解釈が示されています。
一方、派遣元の配慮としては「派遣先に事実関係の調査や再発防止措置を求める等派遣先担当部門と連携を取る」「事案の内容に応じ他の労働者を派遣する等の措置を講じる」などの対応が挙げられています。
【平成15年:事例研究より】