傷病補償年金の認定、1年半と労基法の解雇制限3年の違いは何か【平成15年:事例研究より】

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「療養開始後3年を経過したとき」、傷病補償年金を受けている場合には、労基法の解雇制限の適用が除外されます。

しかし、傷病補償年金の認定は、「療養開始後1年6ヵ月を経過したとき」ですから、2つの規定の間には矛盾がありませんか。

【栃木 M男】

社会保険労務士試験の参考書などで、この期間の違いに着目した引っ掛け問題をよくみかけます。

傷病補償年金は、原則1年6ヵ月経過時に支給決定しますが、この期間は厚生年金法に規定されている障害厚生年金の障害認定日に合わせて設定されました。

しかし、障害厚生年金と違って、傷病補償年金の場合には、決定が先送りされることもあり得ます。

1年6ヵ月経過後も「負傷または疾病が治っていない」が、「傷病等級に該当しない」ケ−スでは、休業補償給付が支給され続けるからです。

一方、療養開始後3年という規定は、労基法の打切補償と関係があります。

3年経過後に平均賃金1,200日分の打切補償を払えば業務上疾病で休業中の者も解雇できますが、傷病補償年金を受けている場合には、打切補償が支払われたとみなすことができます。

ですから、話を整理すると、療養開始後丿年6ヵ月経過した段階で傷病補償年金の受給権を得た人も、3年が経過するまでは解雇制限の適用を受けます。

一方、3年を過ぎた後も休業補償給付を受けている人が存在しますが、そうした人は引き続き療養のために休業している期間及びその後30日間は解雇できません。

このほか、傷病補償給付の決定時期に応じて、何通りかのパターンが考えられます。

【平成15年:事例研究より】