定年退職者を嘱託として再雇用した場合、嘱託となってからも年休は退職時のものをそのまま繰り越し、入社以来の勤務年数によって計算した日数を与えなければならないということです。
退職金を支払い、身分も嘱託で再雇用したのに、年休が引き継がれることに疑問があります。
【福島・K社】
労基法第39条は、年次有給休暇の発生要件として、1年間(初年度は6ヵ月)の継続勤務と1年間(初年度は6ヵ月)に出勤率が8割以上であることが規定されています。
この継続勤務とは、労働契約の存続期間すなわちその事業場における在籍期間を意味しています。
継続勤務を同一の使用者のもとで労働関係が継続していることであると考えれば、定年退職者を嘱託として再雇用した場合、形式的には従前の労働契約と後の労働契約は別個のものといえますが、年休の継続勤務は単に労働契約の形式的な取扱い(形式上は労働契約の終了、再締結)によってのみで判断することは適当ではなく、あくまで勤務の実態に即して判断しなければなりません。
定年退職者を嘱託として再雇用した場合、単なる企業内の身分の切替えにすぎず、実質的に労働関係は継続していると認められます。
定年退職者を直ちに再雇用し、その間に労働関係の切れた日が介在しない場合はもちろん、退職から再雇用までの間に若干の期間がおかれた場合も、その間隔が相当期間に渡って長く、労働関係が実質的にも断続していると認められるような場合でない限り、継続勤務として取り扱わなければなりません。
行政解釈は「定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合(退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む)」は、実質的に労働関係が継続しているものと認められ、勤務年数を通算しなければならないとしています(昭63・3・14基発第150号)。
定年退職後嘱託として再雇用した人については、定年退職時に残存していた年休は嘱託となってからも与えなければなりませんし、年休の勤務年数は定年となる以前の年数も通算した日数の年休を基準日に与えなければなりません。
いったん定年退職しても嘱託として再雇用される場合には、定年前後通じて労働関係は継続していると認められますから、こと年休に関しては、一般従業員の身分がそのまま続いていると同様の扱いになります。
定年退職の際に退職金が支払われたかどうかは、年休の権利発生要件である継続勤務の判断に当たっては直接関係はありません。
【平成16年:事例研究より】