従業員が、朝、所属課のドアに手をかけたところ、中から勢いよく扉が開き、ケガをしてしまいました。
この場合、まだ作業開始前なので、通勤災害になるのでしょうか。
通勤災害と申請した場合、何か本人に不利益がありますか。
【岐阜・S社】
通勤災害の前提条件は、災害の発生場所が住居と就業の場所との間にあることですが、事案では、すでに「就業の場所」内に到達しています。
作業開始前か後かは、関係がありません。
タイムレコーダーを打刻後、階段から落ちてケガをしたケースで、「事業主の支配管理下において発生した災害であり、労災保険法第7条第2項の『住居』と『就業の場所』との間の災害には該当しない」ため、通勤災害とは認められないとした行政解釈があります(昭49・4・9基収第314号)。
しかし、扉の近辺で出会い頭の事故に遭うというのは、管理施設内で通常想定される危険の範囲内です。
ですから、労災保険の申請をするのなら、業務上災害として手続きをすべきです。
通勤災害には初診料負担(通常の労働者は200円が休業給付から差し引かれます)があるほかは、補償面で業務上災害とまったく違いはありません。
だからといって、労働者が選択で申請できるわけではなく、発生状況に応じてどちらか客観的に決まります。
災害の多寡に応じて労災保険料を増減させるメリット制の適用事業では、業務上災害と認定されれば、当然、収支率に影響が出ます。
通勤災害は、事業主の責任が及ばないので、対象になりません。
そういう意味では、本人ではなく会社に不利益も考えられます。
【平成16年:事例研究より】