労災保険では労基法を上回る補償を行うので、事業主は(3日の休業補償を除き)実際に賠償する必要がないといわれます。
しかし、年金の場合、支給決定後間もなく受給者が死亡した場合など、労基法の一時金より受給する金額が少ないようなケ−スが発生しないでしょうか。
そのときは、事業主が差額を負担する義務がありますか。
【長崎 I社】
年金は補償の必要が続く限り支払われるので、受給者にとって心強い制度です。
しかし、年金で受け取ると、総額が労基法で定める一時金の水準に達するまで、一定の時間がかかります。
たとえば、障害等級1級の場合、労基法上、事業主は平均賃金の1,340日分の障害補償を行う義務を負います。
労災保険では、1級の年金は給付基礎日額の313日分ですから、大雑把にみて4年は年金を受けないと、一時金の金額に達しない計算になります。
仮に、この間に他の病気や交通事故などで年金の受給権者が死亡すると、受取年金の総額が労基法の水準を下回ることになります。
これでは不都合が生じるので、労災保険では、差額一時金という制度を設けています。
これは、障害補償年金の受給者が死亡したとき、支給された年金の総額(スライド制適用分は、調整あり)が給付基礎日額の一定日数分に満たない場合に、その差額を一時金で支給するものです。
障害等級第1級では、その基準を1,340日分と定めるなど、労基法の補償日数を下回らないよう、日数設定しています。
一時金の受取手は本人でなく遺族となりますが、トータルとして労災保険の給付が労基法の水準を下回ることはありません。
【平成15年:事例研究より】