労基法と労災保険法の葬祭料の規定を見比べて、疑問を感じました。
「平均賃金の60日分」対「31万5,000円+給付基礎日額の30日分」という規定ですが、必ず労災保険が労基法の補償を上回るといえるのでしょうか。
【山口・Y社】
労災保険の給付は、労基法より手厚く設定しないと意味がありません。
労基法の給付が多額だとすると、不足分を事業主が補填する必要が生じるからです。
しかし、葬祭料の規定は、一目瞭然とはいえません。
労基法では平均賃金、労災保険では給付基礎日額と表現されていますが、「給付基礎日額は、平均賃金に相当する額とする」と定義されています。
ただし、私傷病期間の補正や最低保障の規定がある分だけ、労災保険が有利になるケースもあります。
ここでは単純化のため、平均賃金イコール給付基礎日額とします。
労基法の葬祭料は、平均賃金の60日分ですが、これは大雑把にいって2カ月分の賃金に当たります。
労災保険法の葬祭料は、原則として31万5,000円に給付基礎日額の30日分、つまり賃金1カ月分を加えたものです。
ですから、賃金が31万5,000円(固定部分)より低い人の場合、労災保険の給付額が労基法を上回ります。
賃金20万円の人なら、10万円以上得という計算です。
しかし、賃金が労災保険の固定部分より大きい人は逆に損してしまいます。
このため、労災保険では、「原則の計算額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分とする」というただし書きをつけることで、逆転現象を防いでいます。
【平成16年:事例研究より】