化学物質を取引先に提供したい、MSDSの仕組み教えて【平成16年:事例研究より】

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当社では、最近の景気動向をにらんで新たな事業の展開を図ることとし、その事業のため化学物質を取り扱うことになりました。

化学物質については、安全データシートで一定の事項を取引の相手方に通知することとされていると聞きますが、その具体的な義務内容についてご教示ください。

【青森・R社】

平成12年4月1日から、労働者に健康障害を生ずるおそれのある一定の化.学物質等を譲渡し、または提供する者は、当該化学物質等に係る情報を文書(MSDS=MaterialSafetyDataSheetの略で化学物質等安全データシートと訳している)等により譲渡先または提供先に通知することが、また、事業者はその入手した化学物質に係る情報を労働者に周知させることが、それぞれ義務づけられました。

具体的には、労働安全衛生法第57条の2で、アクリルアミド等の通知対象物を「譲渡し、または提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項…を、譲渡し、または提供する相手方に通知しなければならない」とし、通知すべき内容としては、1.名称(製品名の記載でも差し支えない)、2.成分および含有量、3.物理的および化学的性質、4.人体に及ぼす作用、5.貯蔵または取扱い上の注意、6.流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置、7.通知を行う者の氏名(法人にあっては、その名称)および住所が規定されています。

また、通知した事項に変更を行う必要が生じたときは速やかに、譲渡し、または提供した相手方に通知するよう努めなければならないこととされています。

安衛法第57条の2の通知対象物とは、労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの並びにジクロベンジジンおよびその塩、ベリリウムおよびその化合物等の製造許可の対象物質をいい、政令で定めるものとして、1.アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エチル等の労働安全衛生法施行令別表第9(第1号から第631号まで)に掲げられている物質と2.それらの物質をその重量の1パーセント(ベンゼンにあっては、容量の1パーセント)を超えて含有する製剤その他の物(労働安全衛生規則第34条の2の2)が規定されており、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、または提供する場合については、この安衛法第57条の2の規定は適用されません。

この「主として一般消費者の生活の用に供される製品」には、次のものが含まれます。

1.薬事法に定められている医薬品、医薬部外品および化粧品 2.農薬取締法に定められている農薬 3.労働者による取扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ、粉状または粒状にならない製品 4.通知対象物が密封された状態で取り扱われる製品 この安衛法第57条の2の通知の方法としては、文書の交付以外に、磁気ディスクの交付、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法(例えば、インターネットで閲覧できるホームページ等)で、その方法により通知することについて相手方が承諾した方法で行わなければなりません(安衛則第34条2の3参照)。

この通知は、通知対象物を譲渡し、または提供するときまでに行わなければなりません。

継続的にまたは反復して譲渡し、または提供する場合には、一度通知を行えば、同一の内容の通知を再度行う必要はありません(安衛則第34条の2の5)。

なお、安衛法第57条では、ベンゼンその他の有害物について、容器に入れ、または包装して、譲渡し、または提供する者は、その容器または包装に、1.名称、2.成分およびその含有量、3.厚生労働省令で定める物にあっては、(a)人休に及ぼす作用、(b)貯蔵または取扱い上の注意等を表示しなければならないと定められており、安衛法第57条に規定された物質に関しては、安衛法第57条の表示と法第57条の2の通知の双方が適用されます。

また、安衛法第101条第2項で、「事業者は、第57条の2第1項または第2項の規定により通知された事項を、化学物質、化学物質を含有する製剤…を取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、または備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、当該物を取り扱う労働者に周知させなければならない」とされており、その周知の方法として、掲示または備付けのほか、書面を労働者に交付すること、または磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること一一があります(安衛則第98条の2第2項)。

【平成16年:事例研究より】