外回りの営業社員が、私的な事故で足首を骨折しました。
本人は、「デスクワークならできるので、傷病手当金の申請は難しく、会社は職場転換などの配慮を講じる義務がある」と主張します。
仮に、デスクワークが可能なら、傷病手当金は受給できないのでしょうか。
【岐阜 H社】
傷病手当金は、療養のため労務不能となった被保険者に対し、休業第4日目から支給されます。
この場合、「労務不能」ということばの定義が問題になりますが、必ずしも病床に伏して、まったく動けない状態を指すわけではありません。
仮に入院するような病気だったとしても、出社可能となる前には、自宅静養等の期間を挟むのが普通です。
行政官庁の立場は、「労務不能の判断については、その被保険者の従事する業務の種別などを考えて、その業務に耐え得るかどうかを基準として、社会通念に基づき認定される」(昭31・保文発340号)というものです。
ですから、「傷病の状態が工場における労務につくことができる程度でなければ、家事の副業に従事した場合でも支給する」(昭3・保規第3176号)という扱いが取られています。
お尋ねのケ−スでも、あくまで通常業務を基準として、労務不能か否かの判断が下されるはずです。
デスクワークへの転換要求が出されているようですが、長期的に正常かつ全面的な労務提供ができないなど特殊な事情があれば、就労可能な業務への転換が要求されるとした裁判例もないわけではありません(片山組事件、最判平10・4・9)。
しかし、通常の短期的なヶが等なら、私傷病欠勤として処理して問題ありません。
【平成15年:事例研究より】