外国人の脱退一時金の扱いは総報酬制でどう変わったのか【平成16年:事例研究より】

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当社は製造現場で、一部、外国人労働者を使用しています。

短期在留の外国人が国に帰る際には年金が一時金で支払われますが、その計算には標準報酬月額が使われていました。

平成15年4月から総報酬制がスタートしましたが、仕組みが変わったのでしょうか。

ボーナスを払うと、それがどう影響するのか、教えてください。

【群馬・S社】

外国人労働者でも、日本で働く限りは、厚生年金の被保険者になります。

短期で帰国することが分かっていても、法律の要件に該当する限り、加入が原則です。

しかし、給付の柱となる老齢厚生年金は、長期加入しないと受給権が生じません。

外国人は保険料を納めるだけ、という結果に終わりがちです。

そのため、国際的な年金通算の仕組みが整うまでの間、特例措置として、短期在留外国人への脱退一時金制度が設けられました。

ただし、次の場合には、一時金は支払われません。

・日本国内に住所があるとき ・障害基礎年金・障害厚生年金等の受給権を有したことがあるとき ・最後に被保険者資格を喪失した日から2年を経過しているとき ・国民年金法・厚生年金保険法の年金給付に相当する給付を行う外国の法令の適用を受けるとき 従来の仕組みは、加入期間に応じて、平均標準報酬月額に一定率を乗じて、一時金を計算するというものでした。

たとえば、1年在留で帰国する人には、ちょう1ヵ月分の標準報酬月額相当額が支給されていました(表)。

しかし、平成15年4月からは、総報酬制が導入され、各種年金の計算ベースがボーナスも含めた年収基準に変わりました。

ですから、短期在留外国人の脱退一時金についても、計算の仕組みが変更されています。

基本的な考え方は、賞与も含めて算出した「平均標準報酬額」に加入期間に応じた一定乗率を掛けます(表)。

「平均標準報酬額」というのは、脱退一時金用に定義されたもので、在職老齢年金の計算に使う「総報酬月額相当額」とは、よく似ていますが別概念になります。

平均標準報酬額は、その名のとおり、加入期間すべての標準報酬月額と標準賞与額を基礎に、算定するものです。

平成15年4月以降に加入する外国人に関しては、比較的考え方は簡単です。

これまでは、各月の標準報酬月額を総和し、それを加入月数で除して、平均標準報酬月額を算定していましたが、今後は標準報酬月額の総和に、さらに標準賞与額を加え、それを加入月数で除します。

算定のベースになる平均標準報酬額は、当然、平均標準報酬月額より大きくなります。

それを考慮して、加入期間に応じた乗率はマイナス調整されました。

新しい乗率は、従来の乗率の8割に設定されています。

賞与の支払いが少ないと、以前に比べて一時金の額は減りますが、逆もまた真なりというわけです。

しかし、改正以前から加入していた人については、調整が必要になります。

具体的には、15年3月以前の標準報酬月額に1.3を乗じて、標準賞与がない分を補うという方法をとります。

【平成16年:事例研究より】