1年1度の定期健康診断は、全額会社が費用負担していますが、仮に健保を使って本人が健康診断を受けた場合、会社は3割を填補すれば、それで済むのでしょうか。
【山形 O社】
健康保険の給付理由となる保険事故は、「業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡または出産」と定義されています。
健康診断そのものは、疾病予防を目的とするもので、疾病には該当しません。
ですから、1年1度の定期健診に行っても、被保険者本人が健保を使うことはできません。
ただし、身体に違和感があり、精密検査を受けたけれど、何も異常が発見できなかったときなどは、給付対象となります。
1次健診の結果、有所見の項目があり、それに基づいて2次健診を受診する場合も同様です。
しかし、労働安全衛生法に定める健診項目すべてについて、本人が違和感を感じ、検査を希望するケースなど通常はあり得ません。
ですから、会社の健診とは別に、本人が病院に行き、3割の自己負担で健診を受けるという前提に無理があります。
仮に、会社が社外の健診を強制したなら、掛かった費用はすべて(10割)会社負担となります。
一方、労働安全衛生法第66条5項に基づき、労働者は、「事業者が指定した医師の行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したとき」には、会社の健診を受ける必要はありません。
このケースでは、事業者は健診の実施義務を免れるので、費用を一切負担しなくても差し支えありません。
【平成15年:事例研究より】