トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)
私は、ある業者団体の事務に従事していました。
ところが、最近の不況で解雇されてしまいました。
以前にはその団体で事務員として労働保険事務組合の事務もやっていましたので、事務組合に報奨金が出るとその一部をもらっていました。
ところが退職後に、私が在職中の分の報奨金が出たのですが全くもらえません。
それで労働局に訴えようと考えているのですが、いかがなものでしょうか。
【佐賀・U男】
まず、その報奨金の一部についてもらえるかどうかということですが、毎年もらっていた報奨金の一部が、労働基準法第11条に規定されている「賃金」に該当しているかどうかということが問題になります。
もし、それが賃金に該当しているということになればもらえるということになるでしょう。
では、労働基準法第11条に規定する賃金とはどのようなものであるかといいますと、同条には「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と規定されています。
すなわち、労働基準法でいう賃金というのは「労働の対償」であるものです。
そこで、あなたに対して業者団体から支払われていた報奨金の一部が労働基準法第11条に規定する賃金に該当するかどうかは、それがあなたの労働の対償であったかどうかということが問題になります。
もし、労働の対償であるということであれば、それは賃金ということになり、定められている期日までに業者団体からあなたに支払われなければ労働基準法第24条違反ということになり、また場合によりましては第23条違反ということにもなり、業者団体は処罰の対象となることになります。
では、それらのことについて何をどのようにしらべたらよいかといいますと、労働基準法第89条の規定に基づいて業者団体が作成している就業規則をみてみたらよいと思います。
そこには、賃金についてはかなり詳細に規定されているはずです。
では、もしあなたに支払われていた報奨金の一部が、労働の対償ではなくて、単なる利益の分け前にすぎなかった場合はどうなるのでしょうか。
この場合には労働基準法第11条に規定する賃金には該当しないでしょうが、それをもらうことが権利として確立しているとすれば、労働基準法第23条に規定する使用者(あなたの場合には業者団体です)の退職者に対する「金品の返還」を行わない違反に該当する場合があるかもしれません。
したがって、以上のことについて労働局なり所轄の労働基準監督署にご相談になるとよいかもしれません。
報奨金の性格 ご質問を読んでいて、ふと考えたのですが、もしかしたら、厚生労働省から支給される報奨金は労働保険の事務を取り扱った礼金として支給されるものだから、その事務に従事した者には、それをもらう当然の権利があるという考えが下地としてあるのではないかということです。
というのは、支給額が前年の労働保険料の額により定められているからです。
最近、労働保険事務組合を違法に乗っ取り、それを取り返された社会保険労務士がそのように主張した例がありますが、これは報奨金の性格を誤解しているところから来ています。
すなわち、厚生労働省によりますと、「報奨金は、前年度の労働保険料を基礎としてはいるが、今後における当該事務組合の適正な事務処理を奨励し、その普及発展を助成する趣旨のものである」(昭52・8・16労徴発第448号)と説明しています。
つまり支給される報奨金の金額は、一応前年の労働保険料の額により計算されますが、それはあくまでも計算の方法がそうなっているというだけのことで、その労働保険料の計算や納付の事務に従事した人に対して支払われる謝礼金ではありません。
労働保険事務組合の認可を受けている母体団体によっては、雇用している事務員さんの賃金支払いの一部に充当したり、レクリエーションに使用したり、団体員で分配したりといろいろ活用しているようですが、それはあくまでも「今後における当該事務組合の適正な事務処理を奨励し、その普及発展を助成する」という厚生労働省の考えている報奨金支給の目的の範囲内に限定されることは当然のことです。
したがって、以上に述べましたような報奨金の性格や目的をよく理解したうえで、就業規則や過去の慣例等もよく調べてから都道府県労働局や労働基準監督署にご相談に行かれれば、十分満足できるような回答が得られるのではないでしょうか。
【平成16年:事例研究より】