近く定年退職される従業員がいますが、本人は厚生年金の被保険者期間が短く、年金額はあまり多くありません。
同い年の奥さんが、老齢基礎年金の繰上げ受給をして、生計を支えることも考えているようです。
昭和16年4月2日以降生まれの場合、繰上げは有利になったと聞きますが、どう変わったのでしょうか。
【広鳥 H社】
老齢基礎年金を繰上げ受給する場合、年金額を減額調整する率は、ご指摘のように昭和16年4月2日以降に生まれたか、そうでないかで大きく違います(表)。
年金を繰り上げると、本来の支給開始年齢65歳に達するまでは、前倒しで年金をもらえるので、その分、得になります。
しかし、65歳以降も年金は減額されたままなので、長生きすればトータルの受給額で損をすることもあります。
減額調整率は、平均余命を考えて、この損得のバランスが取れる水準に設定されます。
昔は、平均余命が短かったので、減額幅が大きく、60歳に繰り上げると、満額の58%の年金しかもらえませんでした。
しかし、長寿化傾向を踏まえ、昭和16年4月2日以降生まれの人に対しては、新しい減額率が適用されることになりました。
平成13年4月以降に60歳になる人は、新制度の対象となります。
それでは、新旧減額率を使って、何歳まで生きれば、損になるのかを計算してみましょう。
まず、減額率42%の場合。
60歳から65歳に逢するまでもらう年金額は、1ヵ月当たりの満額支給額をPとすると、 58%×5年×12ヵ月=34.8P 65歳以降X月経週後までに損をする金額は、 42%×P×X月=0.42XP これがちょうど釣り合うタイミングは、 34.8P = 0.42 X P X=83月 つまり、6年とH力月を超えて、長生きするようなら(71歳と11ヵ月)、繰上げしないほうが得なわけです。
新しい減額率30%で同様の計算をすると、X=140月 つまり、11年と8ヵ月を超えて長生きすると(76歳と8ヵ月)、損になります。
しかし、元気なおばあさんなら、これよりもっと長生きしそうな気もします。
【平成15年:事例研究より】