労基法が改正され、合理的な理由があり、社会通念上解雇が相当と認められれば、解雇が可能になったと聞きました。
解雇が禁止されていた業務上の傷病の休業期間や産前産後休業期間およびその後30日間であっても、合理的な理由があれば、解雇できるようになったのでしょうか。
【広島・H社】
労基法第19条は、業務上の傷病による休業期間およびその後30日間と、産前産後の休業期間およびその後30日間の解雇を禁止しています。
この第19条の規定の改正はありません。
労働者の責に帰すべき理由がある場合でも、解雇は一切禁止されています。
合理的な理由があっても解雇はできません。
ご質問は、改正労基法で新たに規定された第18条の2(解雇)に関するものと思われます。
第18条の2は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しています。
法案の段階では、「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。
ただし、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」となっていました。
「労働者を解雇できる」という表現が、使用者は労働者を自由に解雇できると誤解されるおそれがあるとして、衆議院において修正が行われ、前段の「労働者を解雇することができる」とする部分が削除され、改正法のような条文となったものです。
解雇権濫用の法理を労基法に明文化したもので、解雇が自由にできるようになったわけではありません。
労基法第22条(退職時等の証明)に、第2項として「労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」という規定が加えられました。
改正後は、解雇を申し渡した労働者が、解雇日までに証明書を請求した場合には、使用者は解雇の理由を明示した証明書を交付しなければなりません。
退職後に請求できる「退職時証明書」は現行どおりです。
また、労基法第89条の就業規則の絶対的必要記載事項とされている「退職に関する事項」(第3号)の下に(解雇の事由を含む)が加えられています。
【平成16年:事例研究より】