トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)
退職を申し出た者が、出社しないまま年次有給休暇の残日数があるということで、これを完全に消化するまで年休を振り当て完全消化日をもって退職日とするような申し出があった場合、これを認めなければならないでしょうか。
また、退職者が申し出ない限り、年休の残日数があったとしても、本人からの退職申出日をもって退職扱いとしてよいでしょうか。
【青森 N社】
年次有給休暇の権利は、労働関係の存続している問を前提としているものですから、労働者が退職して労働関係が終了すれば、年休の権利も当然に消滅します。
労基法第20条によって解雇しようとしたとき、労働者が20日間の年休の権利を有する場合、行政解釈は「年次有給休暇の権利は予告期間中に行使しなければ消滅する」(昭23・4・26基発第651号)としています。
労働者側からする、いわゆる任意退職の場合も同様で、退職の効力が発生するまでの間に行使しない限り残余の年休権は消滅します。
年休の残日数があっても、退職してしまえば行使することができなくなりますので、労働者が退職するとき、年休の残日数を見込んだ退職届を提出し、年休を請求して休むという場合があります。
このような退職予定者には年休を与えなくてもよいのではないかという疑問があります。
年休制度は労働力の維持培養のために設けられたものですから、退職届を提出して退職していく労働者は、その企業に対する関係では労働力の維持培養は問題になる余地はなく、したがって年休を与える必要はないのではないかという見解によるものと思われます。
しかし、このような理由で退職予定者に対して年休を与えないことはできません。
退職届を提出しても、退職の効力が発生するまでの間は、年休の権利は有効に存続しますので、当然に年休を行使できますし、退職予定者についてとくに他の労働者と別異に取り扱う理由もありません。
実際に退職するまでの問、残余の年休をとることがあっても、適法なものでやむを得ないことです。
労働者から請求された時季に年休を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者に時季変更権が認められていますが、時季変更権を行使するには、変更して与える他の日がなければなりません。
解雇予定日が20日後である労働者が20日の年休権を有していた場合、労働者の年休の時季指定に対し「当該20日間の年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更権は行えないものと解する」(昭49・1・11基収第554号)とされています。
年休は、労働者の請求があった場合、その請求のあった日数の年休を与えなければならないものですから、申し出のない場合には与える必要はありません。
申し出のない場合は、年休の残日数があっても、退職申出日をもって退職扱いしても差し支えありません。
【平成15年:事例研究より】