当社では管理監督者のほか、一部社員も年俸制にすることにしました。
年俸額を決定し、その年俸の16分の1を月例給与として支給し、16分の4を2分して6月と12月に賞与として支給します。
このような方法をとった場合、割増賃金の算定基礎となる賃金に、通常、除外される年2回の賞与も含めることになると聞いたのですが、本当でしょうか。
【東京 T社】
割増賃金の算定基礎になる賃金は、労基法第37条第1項に規定するとおり「通常の労働時間または労働日の賃金」ですが、同条第4項及び労基法施行規則第21条によって通常の労働時間または労働日の賃金でも、①家族手当②通勤手当③別居手当④子女教育手当⑤住宅手当と、通常の労働時間または労働日以外の賃金で⑥臨時に支払われる賃金⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は、計算基礎から除外されます。
通常、年2回の賞与は、⑦の1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当し、割増賃金の算定基礎から除外されるのですが、年俸制で毎月払いの部分と賞与部分を合計して年俸が決められている場合には、賞与部分があらかじめ確定していますので、解釈が異なってきます。
「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと」(昭22・9・13基発第17号)とされているからです。
さらに、「……年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は『賞与』に該当しない。
したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある」(平12・3・8基収第78号)としています。
また、賞与部分が確定している場合、「決定された年俸額の12分の1を月における所定労働時間数(月によって異なる場合には、1年間における1ヵ月平均所定労働時間数)で除した金額を基礎額とした割増賃金の支払いを要す」(前掲通達)としています。
たとえば、年俸が800万円で、毎月の給与がその年俸の16分の1の50万円、夏期賞与が16分の2の100万円、年末賞与が16分の2の100万円と確定している場合、毎月の給与50万円を算定基礎とすることはできず、年俸800万円の12分の1、66万6,667円を算定基礎としなければなりません。
年俸制の場合、すべて割増賃金の算定基礎に賞与を含めて計算しなければならないというわけではなく、月給部分のみ年俸制にし、賞与は別途、勤務成績などを考慮して決定する方法をとれば、賞与は割増賃金の算定基礎から除外することができます。
【平成15年:事例研究より】