過去の実績元に支給額を決定したいが、割増を定額払いにできるか【平成15年:事例研究より】

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時間外労働をした場合には、労基法第37条の規定に基づいて計算した割増賃金を支払っています。

毎月の計算が大変なため、各職階ごとに従来の実績から割増賃金の平均額を算出し、その額を毎月超過勤務手当として支払うようにしたいのですが、割増賃金の定額払いは労基法上問題があるでしょうか。

【東京 K社】

時間外労働または休日(法定休日)労働をさせた場合には、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ命令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」(労基法第37条第1項)と規定し、時間外労働には2割5分以上、休日労働には3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

必ずしも法所定の計算方法による必要はありませんから、支払われた割増賃金が実際に行われた時間外労働に対して支払われるべき割増賃金を上回っている限り違法となりません。

行政解釈は、「労働者に対して実際に支払われた割増賃金が法所定の計算による割増賃金を下回らない場合には、法第37条の違反にならない」(昭24・1・28基収第3947号)としています。

したがって、各職階ごとに従来の実績から割り出した一定額を超過勤務手当として毎月支払うことにしても、その一定額が常に法定どおりに計算した割増賃金を上回っている限り違法といえません。

しかし、実際に行った時間外労働の割増賃金が一定額の超過勤務手当を上回る場合には、法が要求する割増賃金が支払われていないことになり違法となります。

たとえば、超過勤務手当の額が月5万円の場合、ある月の法定の計算による割増賃金が4万円であったとき、5万円の手当を支給すれば、法を上回った割増賃金を支払ったことになりますので問題はありません。

一方、ある月の法定の計算による割増賃金が6万円であったとき、5万円の手当しか支払わないのは違法となります。

時間外労働の多い月、少ない月があって、年間の平均でみれば超過勤務手当が法定の割増賃金を上回っていても、それで済む問題ではありません。

割増賃金は労基法第24条の毎月払いの適用を受けますので、他の月に時間外労働がなくても5万円を支給しているからといって、時間外労働の多い月(法定の割増賃金が5万円を上回る月)を5万円で打ち切ることはできません。

実際に行われた時間外労働の法所定の計算による割増賃金を下回る場合には、差額を支払わなければなりません。

一定額を超過勤務手当として毎月支払う方法をとるとしても、実際に行われた時間外労働の割増賃金がその手当を上回る場合には、その差額を支払う旨規定しておかなければなりません。

違反かどうかの解釈としては以上のように考えられても、定額制の割増賃金(超過勤務手当)を採用することは、労基法の趣旨から決して好ましいものでありません。

【平成15年:事例研究より】