当事業所で、引き続き10年以上雇用していた社員がこの3月末に定年退職し、その退職の日の翌日から嘱訊1として再雇用することにしました。
退職の日から再雇用までの間に1日の空白もありませんが、この場合にも雇用保険被保険者資格喪失届の提出は必要でしょうか。
また、その他に必要な手続きはあるのでしょうか。
【佐賀 O社】
雇用保険においては、原則として、労働者は雇用保険の適用事業に雇用されたときに被保険者となり、離職等の翌日に被保険者でなくなります。
そして、適用事業の事業主は、被保険者となったことについては、その事実のあった日の属する月の翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届を、また、被保険者でなくなったことについてはその事実のあった日の翌日から起算して10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届を公共職業安定所に提出しなければなりません。
そこでお問い合わせの、定年退職し、退職の日の翌日に再雇用された方について考えてみますと、形式的に、一旦離職があり、その後新たに生じた雇用関係に基づき被保険者となったものであるといえます。
しかし、1日の空白もなく再雇用された場合は、事実上雇用関係に中断はなく、その実質は単に身分の切り替えがあったにすぎないと考えられます。
そこで、このような場合は、退職金の支払の有無または労働条件、勤務先等の変更の有無にかかわらず、その者の雇用関係は引き続き存続しているもの、すなわち、被保険者でなくなったこと、および被保険者となったことの事実はないものとして取り扱うこととしています。
したがって、お問い合わせの社員の方については、それに伴う被保険者資格の取得・喪失に関する届出の提出は不要であり、引き続き被保険者として継続しておいて差し支えありません。
ただし、この嘱託が就業規則の適用を受けず、出勤義務もなく、また、他の職業に就くことも全く自由であるような、事実上雇用関係にないようなものである場合には、その定年退職の日の翌日に被保険者でなくなったものとしてとり扱われることになります。
また、嘱託として再雇用されたことに伴い、1週間の所定労働時間が短縮され、短時間就労者(その者の1週間の所定労働時間が、当事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ、40時間未満である者)となった場合は、 ①1週間の所定労働時間が20時間以上であること ②1年以上引き続き雇用することが見込まれること を満たさなければ被保険者とはなりません。
なお、その方を60歳以上の定年に達した後、就業規則等の明示的な定め、または慣行により再雇用した場合は、その定年に達した後速やかに、雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書を提出しなければなりません。
【平成15年:事例研究より】