老齢もらう直前に心臓疾患になったが、3級だと障害を請求した方が得か【平成15年:事例研究より】

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定年間際の従業員が、心臓疾患の悪化で休職しています。

仮に障害等級3級に認定されたとしても、60歳になれば、特別支給の老齢厚生年金をもらえます。

どちらをもらったほうが得なのでしょうか。

【千葉 E社】

3級の障害厚生年金も老齢厚生年金の報酬比例部分も、計算方法はよく似ています。

しかし、細かく比較すると、微妙に違う点もあります。

一般論として、どちらが有利か検討してみましょう。

その前に、基本的な点を確認して置きます。

お尋ねの方が昭和18年生まれとすれば、60歳に達した後、62歳になるまでの間、報酬比例部分相当の老齢厚生年金だけが支給されます。

対象者がいても、加給年金は付きません。

62歳に達すると、それに加え定額部分と加給年金(対象者ありの場合)も受け取ることができます。

報酬比例部分相当と3級障害厚生年金がおおよそ同じ額ですから、定額部分・配偶者等の加給年金を足せば、比較になりません。

62歳以降は、どう転んでも、特別支給の老齢厚生年金を選択(障害厚生年金は支給停止)することになるでしょう。

それでは、60歳から62歳までの間はどうでしょうか。

3級の障害厚生年金にも、加給年金は付きません。

ですから、本体部分だけで、両方の金額を比較することになります。

老齢厚生年金の計算式は、 平均標準報酬月額×生年月日に応じた乗率×被保険者月数×物価スライド 障害厚生年金の計算式は、 平均標準報酬月額×7.125 (経過措置で7.5が適用されるケースあり)×被保険者月数×物価スライド 2つをくらべると、乗率の部分だけが違います。

老齢厚生年金の乗率は、昭和21年4月2日以降に生まれた人については、障害厚生年金と同じ7.125 (経過措置あり)です。

しかし、昭和18年生まれの人に対しては、7.439 (経過措置で7.83の場合あり)が適用されます。

このため、単純に比較すると、老齢厚生年金の報酬比例部分の方が、金額的に障害厚生年金を上回ります(ただし、障害厚生年金には被保険者月数最低300月の保障あり)。

一方で、老齢厚生年金は、雑所得扱いで課税対象となりますが、障害厚生年金の方は非課税扱いとなっています。

そのあたりの兼ね合いをみながら、どちらが有利か判断することになります。

しかし、60歳に達する前、数力月でも障害厚生年金を貰えるなら、当然、もらっておくべきです。

仮に、老齢厚生年金が有利だとすれば、60歳になってから、選択換えをすれば済むことです。

ですから、いずれにしても、障害厚生年金(障害認定日が来たとき)、老齢厚生年金(60歳に達したとき)の両方について、裁定請求するべきです。

【平成15年:事例研究より】