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ジクロロメタンによる健康障害を防止するために、新しく指針が策定されたとのことですが、事業者として注意すべき事項、適用される業務の範囲等について教えてください。
【群馬 O社】
ジクロロメタンは別名二塩化メチレン、塩化メチレン、メチレンクロライ・ドレメチレンジクロライドとも呼ぱれ、樹脂や生ゴムなどの溶剤、冷媒、脱脂剤などに使用されています。
この物質は、吸入によりめまい、頭痛、吐き気を引き起こし、麻酔性もあるため、有機溶剤中毒予防規則の第2種有機溶剤として局所排気装置等の設置、作業主任者の選任、作業環境測定、特殊健康診断の実施等有機溶剤中毒を防止するため特別な管理を要する物質とされています。
さらに、今般動物実験により、ほ乳動物に対し皮下組織、乳腺、腹膜および肝臓に悪性の腫瘍が発生することが明らかになったことから、有機則の規定に加えて必要な措置に関して労働安全衛生法第28条に定める健康障害を防止するための指針が定められました。
有機則は、ジクロロメタンを5%を超えて含有するものを製造・取り扱う場合であって、有機溶剤業務(有機則第1条第1項第6号に規定された業務)に該当する場合に適用されますが、この指針はジクロロメタンを1%を超えて含有するものを製造・取り扱う業務全般に適用されます。
また、この指針では、ジクロロメタンを取り扱う労働者の健康障害を防止するため以下の措置を講ずるよう定めています。
1.ばく露低減措置の実施 労働者のジクロロメタンヘのばく露の低減を図るため、作業の実態により作業環境管理、作業管理その他必要な措置を講ずる必要があります。
作業環境管理とは使用条件等の変更、作業工程の改善、設備の密閉化、局所排気装置等の設置等の措置を講ずること、作業管理とは労働者がジクロロメタンにばく露されないような作業位置、作業姿勢または作業方法の選択、有機ガス用防毒マスクまたは送気マスク、不浸透性の保護衣、保護手袋等の使用、ジクロロメタンにばく露される時間の短縮等の措置を講ずること、またその他の措置にはより有害性の少ない代替物質への変更、ジクロロメタンの発散源と隔離された場所での遠隔操作等が含まれます。
これらの措置は、その全てを実施しなければならないということではなく、事業場がどの措置を講じるかは、個々の作業の実態に応じて適切な措置を選択していただくこととなります。
なお、保護衣、保護手袋についてはJIS T8115 (化学防護服)およびJIS T8116 (化学防護手袋)の規定を参考とし、作業内容に適したものを使用してください。
2.作業環境測定の実施と記録の保存 ジクロロメタンを製造し、または取り扱う屋内作業場については、6ヵ月以内毎に1回作業環境測定基準に従って空気中のジクロロメタンの濃度測定を実施してください。
また測定結果については作業環境評価基準に基づき評価を行い、評価の結果に基づき施設、設備、作業工程、作業方法等について点検を行ってください。
なお、ジクロロメタンは、がん原性に着目した作業環境管理を行う必要があることから、作業環境を作業環境評価基準の第1管理区分に維持することが望ましく、また、現行の管理濃度は100ppmとなっていますが、日本産業衛生学会やACGIH(米国産業衛生専門家会議)では50ppmを提唱していますので、評価に当たっては留意してください。
また、がん等の遅発性の健康障害は、ばく露状況を長期間にわたって把握する必要があるため、実施した作業環境測定の結果および評価の記録を30年間保存してください。
3.労働衛生教育の実施 ジクロロメタンを製造し、または取り扱う業務に従事している労働者および新たに従事させることとなった労働者に対しては、次の項目について4.5時間以上の労働衛生教育を行ってください。
なお、すでに昭和59年6月29日付基発第337号に基づく「有機溶剤業務従事者に対する労働衛生教育」を実施している場合には、本教育については省略またはジクロロメタンの有害性等の必要な事項について実施してください。
・ジクロロメタンの性状および有害性 ・ジクロロメタンを使用する業務 ・ジクロロメタンによる健康障害、その予防方法および応急措置 ・局所排気装置その他のジクロロメタンヘのばく露を低減するための設備およびそれらの保守、点検の方法 ・作業環境の状況の把握 ・保護具の種類、性能、使用方法および保守管理 ・関係法令 4.製造等に従事する労働者の把握 ジクロロメタンを製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者について、1月を超えない期間毎に労働者の氏名、従事した業務の概要および当該業務に従事した期間、著しく汚染される事態が発生した際の概要、応急措置等について記録を行い、30年間保存してください。
5.危険有害性等の表示等 ジクロロメタンを譲渡・提供するときには化学物質等安全データシート(MSDS)の交付を行い、その内容について労働者への周知を図るほか、容器・包装等に名称、有害性などの項目を表示してください。
MSDSの作成方法は、JIS Z7250または(社)日本化学工業協会の作成指針等を参考にしてください。
有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
口 染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、甘味料、火薬、写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらのものの中間体を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌又は加熱の業務
ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
二 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
へ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
卜 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に街頭する洗浄の業務を除く。)又は払しょくの業務
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗布の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗布の業務を除く。)
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務
【平成15年:事例研究より】