賃金不支給の出勤停止は、減給制裁の制限に触れるか【平成15年:事例研究より】

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就業規則の制裁の条項に、出勤停止は「始末書をとり、7日以内の出勤停止とする。

この問は賃金は支給しない」と定められています。

この条項を適用し、3日以上の出勤停止処分をした場合、賃金総額の10分の1を超える減額となりますが、これは減給制裁の制限に触れることになるのでしょうか。

それとも、減給制裁とは無関係と考えてよいのでしょうか。

【東京 Y社】

制裁処分として3日以上の出勤停止処分をした場合、賃金が控除されるから、これは1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超える減額になり、労基法第91条に触れるのではないかということですが、出勤停止の制裁を受けた場合、この期間中、賃金が受けられないのは制裁として当然の結果で、労基法第91条と関係はありません。

行政解釈は、「就業規則に出勤停止及びその期間中の賃金を支払わない定めがある場合において、労働者がその出勤停止の制裁を受けるに至った場合、出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であって、通常の額以下の賃金を支給することを定める減給制裁に関する法第91条の規定には関係はない。

ただし、出勤停止の期間については公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である」(昭23・7・3基収第2177号)としています。

減給の制裁は、職場規律に違反した労働者に対する制裁として、就労を継続させながら、本来ならばその労働者が受けるべき賃金のなかから一定額を差し引くのに対し、出勤停止は制裁として一定期間就労を禁止し、その期間の賃金を支払わないものです。

出勤停止は就労させないでその賃金を支払わない(賃金を減額)のですから、就労させておいてその賃金を減額する減給と相違し、したがって、労基法第91条「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」という減給制限の適用を受けません。

出勤停止は、就労させないで賃金を支払わないものですから、3日以上の出勤停止処分をし、その額が賃金の総額の10分の1を超えても、労基法第91条に抵触しません。

出勤停止期間については「当該事犯の情状の程度等により制限がある」とあるように、制裁事由と制裁との間の均衡を十分に考慮する必要があります。

【平成15年:事例研究より】