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60歳の嘱託社員が、現在、老齢基礎年金の一部繰上げを受けています。
次の契約期問満了と同時に退職の予定ですが、雇用保険と年金の調整で質問があります。
求職の申し込みをすると、特別支給の老齢厚生年金はストップしますが、繰上げ支給の基礎年金はそのまま受給可能という理解で正しいのでしょうか。
【東京・K社労士】
一般の読者のために、まず老齢基礎年金の一部繰上げのイメージを、簡単に説明しておきます。
現在、60歳の人は、62歳になるまで、特別支給の老齢厚生年金のうち定額部分が支給されません。
この収入の減少を補うために、基礎年金の一部繰上げが認められています。
1年間繰上げた場合、定額部分の金額は5分 の3に減ります(もともと62歳から65歳まで3年回支給されるものを5年間に均したので)。
基礎年金は残りの5分の2だけを繰上げますが、このときその30%が減額されます。
65歳から支給される年金を5年間繰上げたので、5年分の減額率が適用されます。
ちょっと、ややこしいですが、60歳以降もらう年金は、満額の報酬比例部分、5分の3の定額部分、28%(5分の2×70%)の老齢基礎年金、この3本立てになります(図)。
もちろん、在職期問中は、在職老齢年金の対象になり(老齢基礎年金を除く)、支払われる年金は減額されます。
さて、この人が退職すると、3本立ての年金を減額なしで受け取れるようになりますが、雇用保険の受給手続きをすると、話が違ってきます。
厚生年金保険法附則第11条の5では、「附則第8条の規定による老齢厚生年金は、受給権者が雇用保険法第15条第2項の規定による申し込みをしたときは、その支給を停止する」と定めています。
「附則第8条の規定による老齢厚生年金」とは、いわゆる特別支給の老齢厚生年金のこと、「雇用保険法第15条第2項の規定による申し込み」とは、ハローワークに対する求職申込みのことです。
ですから、お尋ねの方がハローワークに行くと、特別支給の老齢厚生年金に該当する部分(満額の報酬比例部分と5分の3の定額部分)は、支給がストップしてしまいます。
しかし、残りの老齢基礎年金(一部繰上げ分)に関しては、そのまま受給し続けることができます。
【平成16年:事例研究より】