当社に通勤災害により2ヵ月ほど休業している者がいます。
あと1力月ほど休業が必要ですが、その者の社会保険料(健保、厚年)は、無給で賃金の支払いがなくても徴収されます。
無給で保険料を控除できないので、会社が立替えて納めていますが、本人負担分は本人から徴収することができるでしょうか。
通勤災害であるため、会社負担となるのでしょうか。
【広島・T社】
健康保険では、報酬(賃金)の支払いの有無に関係なく、被保険者である限り保険料を納めなければなりません。
厚生年金も同様です。
通勤災害による休業中で賃金の支払いがなくても、使用関係は存続しますので、被保険者資格は喪失しません。
被保険者資格が存続する限り、毎月の保険料は納めなければなりません。
被保険者に支払う賃金がなく、保険料を控除できない場合でも、保険料の納付義務は事業主にあります。
賃金の支払いがなく、被保険者負担分を控除できない場合であっても、事業主は被保険者負担分と事業主負担分を合わせて納付しなければなりません。
行政解釈は、「被保険者に対して支払うべき報酬がないため保険料を控除し得ぬ場合又は支払っても控除し得ぬ場合であっても、被保険者の負担すべき保険料は、納付すべき義務を負う」(昭4・1・18事発第125号)としています。
通勤災害による休業中で賃金の支払いがなくても、依然として保険料の納付義務は事業主にありますので、事業主が被保険者負担分も納付することになりますが、これは立替え納付で、被保険者負担分はあくまで被保険者が負担すべきものです。
事業主が被保険者負担分を立替え納付した場合、「事業主が控除しないで被保険者負担の保険料を立替納付した場合でも、当該負担分はあくまで被保険者の負担すべきもので、事業主は、その部分について私法上の求償権を有する」(昭25・6・21保文発第1418号)とされ、事業主はその金額だけ私法上の求償権として取得するIことになります。
通勤災害ということで、事業主が被保険者負担分を負担しなければならない法的な義務はありません。
通勤災害(業務災害の場合も同様)であると私傷病であるとで変わりありません。
通勤災害でも、当然、立替え納付した保険料を返還させることができます。
立替分をどう返還させるかは、事業主と被保険者との話合いによります。
【平成4年:事例研究より】