神経系統の機能に著しい障害を残し、障害補償年金の1級に該当するために介護補償給付を受けているとします。
その人が、もしI神経症状により治療を受けたりしたときには、療養補償給付は受けられないようですが、矛盾しているような気がします。
実は職場の同僚だった人にそのような人がいますので、ご質間する次第です。
一体どうなっているのでしょうか。
【北海道 H男】
介護補償給付について 介護補償給付は、労災保険法第12条の8第4項の規定によりますと、障害補償年金または傷病補償年金の受給者のなかで、介護の必要な一定の人に対して支給されます。
ご承知のように、障害補償年金は業務上の負傷や疾病が「なおった人が対象ですし(労災保険法第12条の8第2項、労働基準法第77条)、傷病補償年金は「なおっていない」人が対象です。
したがって、介護補償給付は「補償」給付はなおっていない段階であっても、その状態によって支給対象となり得ます。
ところが、療養補償給付はなおっていないために療養が必要な人に対して支給されますので、負傷疾病がなおったことにより障害補償年金を受給している人に対して支給されることはありません。
旧労働省の障害補償給付についての労働基準局長通達の中に、次のような部分があります(昭50・9・30基発第565号)。
『障害補償は、障害による労働能力のそう失に対する損失てん補を目的とするものである。
したがって、負傷又は疾病(以下「傷病」という。)がなおったときに残存する、当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態であって、その存在が医学的に認められ、労働能力のそう失を伴うものを障害補償の対象としているものである。
なお、ここにいう「なおったとき」とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、残存する傷病が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう』 以上でお分かりいただけますように、障害補償は「療養の終了」が条件となっていますので、障害補償年金の支給を受けている以上は、たとえ介護補償給付を受けることがありましても、療養補償給付を受けるということは事実上あり得ないことになります。
事実上の療養は? 以上、理くつについて述べましたが、実際には投薬を受けたり、いろいろの処置を受けたりすることもあるのではないかと思います。
では、その場合の扱いはどうなるのでしょうか。
次にいろいろな場合について述べることにします。
一 傷病の再発のとき これは一と違って、一旦は傷病がなおったのに再発したために療養が必要な場合です。
療養補償給付はもちろん、療養のために休業して賃金をもらえないということであれば、休業補償給付の対象にもなります。
当然のことですが、そのような場合には障害補償年金の支給はストップされます。
二 外科後処置のとき これはなおっており、再発でもないのですが、外科的な診療や理学療法を行うことにより障害状態が軽減すると見込まれるときです。
この場合には保険給付でなく労働福祉事業として指定された病院等において無料で行われます。
一定の旅費も支給されます。
この外科後処置により障害状態が改善されて、その結果障害等級に変更があれば、補償給付額が変更されることは当然です(労災保険法第15条の3)。
年金でない一時金の場合には軽減されても返金の必要がないことはもちろんです。
三 その他の場合 以上のほかにも投薬を受ける等のことがあるかもしれませんが、労働福祉事業の中のアフターケア等の制度に該当する場合以外には労災保険よりの給付には関係がないということです。
情況によっては健康保険等に相談してみたらいかがでしょうか。
【平成15年:事例研究より】