当社では、業務提携のため、外国企業に社員を派遣することになりました。
数年後には帰国させる予定ですので、雇用関係は継続したままで休職扱いとします。このような場合、海外に派遣する者に日本の雇用保険が適用されるでしょうか。
派遣時に必要な手続きについても、解説をお願いします。
【埼玉・D社】
外国で働く場合にも、例えば海外視察のために出張する場合、海外駐在員として一定期間海外の支社等に勤務する場合、外国の企業へ出向する場合等さまざまな実態があり、各企業における内部の取扱いもさまざまであると思われますが、雇用保険の適用の面からみた場合、おおむね次の4つの型に分けることができます。
1.外国へ出張して働く場合 2.国内の適用事業の事業主に雇用される者で、その事業主の海外の支社、支店、工場等に勤務する者 3.国内の適用事業の事業主との雇用関係を残したまま、その事業主の命により、一定の期間、外国の事業主の下で雇用される者 4.国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させ、外国の企業に雇用される者 1.および2.の場合は、適用事業の事業主との問の雇用関係は何ら変更されていないと考えられますので、被保険者資格は継続します。
ただし、日本の事業主が現地において採用する労働者は、その国籍のいかんを問わず、日本の雇用保険の被保険者とはなりません。
3.の外国企業への出向の場合は、出向した労働者は、海外の事業主と新たな雇用関係を結ぶことになりますが、その出向が国内の適用事業の事業主の命によるものであり、その事業主と雇用関係が存続している限り、すなわち、在籍出向である限り、外国の企業に勤務している間も引き続き被保険者として取り扱われます。
この場合にも、雇用保険に関する届出等の事務を行う必要がありません。
雇用保険においてこのような取扱いを行っているのは、仮に派遣先の企業のある国において、その国の失業補償制度が適用されるとしても、外国の失業給付は、その国の外においては行われないのが通例であり、帰国後すぐに失業した場合などには、給付を受けられない者が出てくるので、その保護の必要上、これらの者の被保険者資格を継続させることとしているものです。
4.の国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させて、外国の事業主と雇用関係を結んだ場合は、被保険者資格を喪失します。
ご質問のケースは、上記の3.に該当すると解されますので、被保険者資格はそのまま継続することとなり、特に事務手続は必要ありません。
ただ、支店に勤務している者を外国出向させる場合、一旦本社勤務とし、本社から出向させるような形をとるとすれば、転出および転入の手続が必要となることはいうまでもありません。
出向元の事業主から給与が支払われる場合には、その海外勤務者に対して支払われる給与のうち、その者が国内勤務に服する場合に支給されるべき給与と同等の額を限度として、保険料や基本手当日額の算定基礎となる賃金として取扱い、海外勤務手当などが別に支払われている場合、その超過額に相当する額については、実費弁償的なものとして賃金とは認められません。
一方、出向元から給与の支払がない場合については、保険料の算定の基礎となる賃金額はゼロとなり、外国出向期問中はその者についての保険料を支払う必要はありません。
また、出向元からの賃金の支払がないと、その被保険者が帰国して6ヵ月経過しない間に失業した場合など基本手当の受給資格を得られない場合がありますので、その救済を図るため、「事業主の命による外国における勤務」について、受給要件の緩和が認められています。
【平成16年:事例研究より】