正社員が退職するためパートを雇い入れることにしました。
正社員には従来から毎年夏に健康診断を実施していますが、数カ月間契約のパート労働者にも、正社員と同じ健康診断の実施が必要でしょうか。
【福島・S社】
健康診断は、個々の労働者について健康状態を把握し、適切な健康管理を行っていくために大変重要なことです。
労働安全衛生法は、その第66条において事業者は労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならないと規定しています。
同条による健康診断には、次の5種類があります。
1.一般健康診断(第1項) 2.一定の有害業務に従事する労働者に対する特別の項目についての健康診断(第2項前段) 3.一定の有害業務に従事した後、配置転換した労働者に対する特別の項目についての健康診断(第2項後段) 4.有害な物やガス等を発散する場所における業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断(第3項) 5.都道府県労働局長が指示する臨時の健康診断(第4項) 1.の一般健康診断の内容は、常時使用する労働者を雇い入れるとき(雇入時の健康診断)や常時使用する労働者を雇い入れた後1年以内ごとに1回、定期に(定期健康診断)、一定の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされています(労働安全衛生規則第43条および第44条)。
また、労働安全衛生規則第13条で規定されている特定の業務(1.深夜業を含む業務、2.多量の高熱物体または低温物体を取り扱う業務および著しく暑熱または寒冷な場所における業務、3.重量物の取扱い等重激な業務、4.一定の有害物を取り扱う業務等)に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際および6月以内ごとに1回、定期に一定の項目について医師による健康診断(特定業務従事者の健康診断)を行わなければならないとされています(労働安全衛生規則第45条)。
さらに、海外派遣労働者の健康診断等も規定されています。
2.の特別の項目についての健康診断は、一定の特定化学物質等を製造し、または取り扱う業務、屋内作業場等で一定の有機溶剤を製造し、または取り扱う業務、鉛業務等に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際および定期(その業務等により3月、6月または1年以内ごと)に、一定の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされています(特定化学物質等障害予防規則第39条、有機溶剤中毒予防規則第29条、鉛中毒予防規則第53条等)。
その他、3.の特別の項目についての健康診断は特定化学物質等障害予防規則第39条に、4.の歯科医師による健康診断は労働安全衛生規則第48条に、それぞれ規定されています。
労働安全衛生法でいう労働者には、労働基準法第9条で定義されている「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」であれば、正社員、パート労働者、アルバイト等その種類を問わず該当しますが、これらの健康診断の対象者である「常時使用する労働者」にパート労働者が該当するかについては、「短時回労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(平成5年12月1日基発第663号ほか)の通達が参考になります。
同通達においては、一般健康診断を行うべき、「常時使用する短時間労働者」に該当するとして、次にいずれの要件をも満たす者であるとしています。
1.期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の更新により1年《労働安全衛生規則第13条の有害業務に従事する場合には6月》以上使用されることが予定されている者および当該労働契約の更新により1年《同条の有害業務に従事する場合には6月》以上引き続き使用されている者を含む)であること。
2.その者の1週間の労働時間が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
なお、1週間の労働時間数が4分の3未満である短時間労働者であっても概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。
したがって、貴社が雇い入れようとしているパート労働者がその業務、契約期間、労働時問数等からみて[常時使用する短時間労働者]に該当するのであれば、当該パート労働者に対する健康診断の実施義務を負うことになります。
なお、期間の定めのある労働契約を反復して使用する場合に、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではなく、引き続き使用されていると解されることがあることに留意する必要があります。
【平成16年:事例研究より】