女性従業員が、双子を懐妊しました。
双子の場合、14週間前から産前休暇を取ることができ、出産手当金ももらえるとのことですが、分娩前に早々と手当金を請求したとします。
予定が狂って、出産が数週間遅れた場合、先に受け取った分を返還する必要がありますか。
【長野 S社】
産前休暇は本人の請求が前提ですから、目一杯取得する人が少ない職場では、戸惑うかもしれません。
出産手当金は、産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間が対象になると一般に理解されています。
しかし、健康保険法第102条をよく読むと、「出産の日(出産の日が出産の予定日後のときは予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日後56日の間」と規定されています。
産前の起算日は、分娩日が予定日の当日か予定日前のときは「現実の分娩日」、予定日後のときは「予定日」となります。
産後の計算では、出産日の早い遅いに関わらず、「現実の出産日」の翌日を起算日とします。
そうすると、分娩が遅れた場合には、産前の起算日となる「予定日」と、産後の起算日となる「現実の出産日」との問に、空白期間が生じます。
この期間の扱いが問題ですが、条文上は「産前休暇の始まりの日から産後休暇の終わりの日までの間」が対象になると解されますので、空白期間も含めて手当金が支給されます。
98日といえば3ヵ月強に当たるため、産前に給付を請求するのが普通です。
しかし、その後、実際の出産日がどのように変わっても、産前休暇の始まりの日が移動することはなく、後から調整する必要は生じません。
【平成15年:事例研究より】