改正派遣法が施行され、製造業の現場でも派遣社員の受入れが可能になったと聞きます。
当社でも、派遣の活用でコストの削減を図りたいと考えています。
派遣契約で注意すべき点を、教えてください。
【静岡・U社】
今回の派遣法改正は、派遣社員活用の幅を広げるうえで、大きな意味を持ちます。
しかし、これで終わりではなく、段階的な自由化への一歩と捉えるべきです。
「製造現場への派遣解禁」について、主要な改正点は次の3つです。
1.物の製造の業務について、労働者派遣事業を行うことができるものとすること。
2.物の製造の業務について労働者派遣事業を行う事業所については、当分の問、その旨を許可申請書及び届出書に記載する等しなければならないものとすること。
3.改正法の施行の日から起算して3年を経過する日までの間は、派遣期間を1年とするものとすること。
一つひとつ、その意味するところを考えてみましょう。
まず、1.から。
「物の製造の業務」とは、「製造業の直接生産ラインの業務をいい、具体的には、物を直接融解、鋳造、加工し、又は組立、塗装する業務、製造用機械の操作の業務及びこれらと密接不可分の付随業務として複数の加工・組立業務を結ぶ場合の運搬、選別、洗浄等の業務をいう」とされています。
製造業の会社でも、一般事務部門はもちろん、製図や原料納搬入など直接工程以外の業務については従来から派遣社員の受入が可能でした。
2.は、派遣業者に対する規制です。
当分の間、「物の製造」に関する派遣をする場合、その旨の申請が必要という意味です。
製造現場で派遣が可能になったと聞いて、従来からある「疑似請負(請負の形を取るけれど、実態は派遣)」もすべて適法とみなされると勘違いする人もいそうです。
しかし、きちんと許可を受けた業者による派遣だけが、OKになったにすぎません。
派遣の利用の際は、業者の資格をチェックする必要があります。
3.は期問の制限で、改正後3年間は、派遣社員を受け入れる場合、最長限度は1年になります。
この期間制限の話は複雑なので、基本的な点からご説明します。
現在、派遣社員は、大きく2種類に分けられます。
第1のグループは、専門業務型派遣と呼ばれるものです。
その範囲は、派遣法施行令で26業務に限定されています(表)。
このうち、第14号(建築物清掃)、第15号(建築設備運転、点検、整備)、第16号(受付・案内、駐車場管理等)のうち駐車場管理等、第24号(テレマーケティング川こ関しては、派遣契約期問の長さに制限はありません。
それ以外の業務では、契約期間は最長3年と定められていますが、更新回数に制限はありません。
第2のグループは、それ以外の派遣です。
こちらは、同一の業務について最長3年(過半数労組、ないときは過半数代表者の意見聴取が条件)と規定されています。
専門業務型と違い、「人」ではなく「業務」に対して制限が課せられています。
ですから、同一の業務に関して派遣社員を使い始めたら、人を変えようが派遣会社を変えようが、3年経った後は派遣の使用が認められません。
それでは、「物の製造の業務」は、どういう位置付けになるのでしょうか。
「物の製造の業務」は、それ以外の派遣の中に含められ、特別に「最長1年(施行後3年問)」という期問制限が課されています。
ですから、派遣の使用は、「臨時的・一時的な業務」に、当面、限定されるということです。
【平成16年:事例研究より】