社長1人の法人(いわゆる1人法人)でも、健康保険に加入する義務があるといいます。
一方、労災保険では、パートを1人でも雇えば、事業所として保険関係を成立させる必要があると聞きますが、こちらは「社長以外に誰か1人従業員がいれば」という意味に取れます。
保険加入について、健保と労災では、扱いが違うという理解で間違いないでしょうか。
【千葉・C事務所】
「従業員が1人でも、保険加入が必要」とひと口にいいますが、ご指摘のように、健康保険と労災保険では、微妙な違いがあります。
健康保険の強制適用事業所は、1.強制適用業種(表)に属する事業所で、常時5大以上の従業員を使用するもの、2.国または法人の事業所で常時従業員を使用するものーの2タイプに分類できます。
1人法人は、この2.のタイプに属します。
健康保険では、法人の代表者または業務執行者で、法人から労務の対象として報酬を受けている者は被保険者となるので、社長も[従業員]の1人とカウントされます。
歴史的にいうと、昭和61年4月から、5人以上のサービス業など(強制適用業種以外の業種)の法人事業所、5人未満の法人事業所について適用拡大が実施された結果、法人企業の場合、1人法人でも強制加入となったわけです。
一方、労災保険では、法の条文上は、「労働者を使用する事業を(すべて)適用事業とする」建前です。
こちらは、「従業員」でなく「労働者」と明記しています。
ただし、現在のところ、失保・労災保険関係整備政令第17条により、農林水産事業で5人未満の労働者を使用する個人事業主は、暫定任意適用(強制加入でない)という扱いです。
社長については、「法人の代表者または執行機関たるものの如く、事業主体との関係において使用従属の関係に立たないものは労働者でない」(昭23・1・9基発第14号)という解釈例規があります。
ですから、社長1人の法人の場合、他に労働者の定義に該当する者を雇用しない限り、労災保険の適用事業となりません。
このように、社長1人の事業所では、健保と労災で取り扱いが違う点には注意が必要です。
【平成16年:事例研究より】