近所の主婦を、フルタイムのパートで採用することになりました。
現在、62歳です。
本人は、今さら厚生年金に入っても、何の得にもならない、などと文句をいっています。
強制加入ですから仕方のないことですが、本当にメリットがないのでしょうか。
【静岡・J社】
主婦のなかには、年金への関心が薄い人が少なくないようです。「65歳になったら国民年金からお金が出るのだろう」、「サラリーマンの年金なんて関係ない」、そんな風に考えておられるようです。
そもそも、年金の保険料を払ったことがないという専業主婦が多いはずです。
「60歳を過ぎて、いまさら少しばかり保険料を払って何の足しになるのか」、そういう疑問が出てきて当然です。
保険料を納めていない主婦が、どうして年金を受け取れるのでしょうか。
老齢基礎年金の受給資格要件は、原則として、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算期間(カラ期間)を合わせて、25年以上あることです。
専業主婦だと、保険料納付済期間はないか、というとそうではありません。
昭和61年4月以降、国民年金の第3号被保険者期間は、保険料納付済期間とみなされるようになりました。
第3号被保険者とは、被用者保険(厚生年金など)に加入している夫の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の人のことです。
ですから、お尋ねの人は、(届出を済ませているとして)昭和61年4月以降、本人が60歳になるまで、あるいは夫が退職するまでの期間は、保険料納付済期間となります。
さらに昭和61年3月以前、主婦として国民年金に任意加入できた期間は、合算期間にカウントされます。
両方合わせると、25年の要件を軽々とクリアしていることが分かります。このため、65歳に到達すると、老齢基礎年金を受け取れるわけです。
さて、そういう人が厚生年金に加入した場合には、どうなるのでしょうか。
厚生年金の老齢関係給付は、60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金と、65歳以降の(正規の)老齢厚生年金の2つに分かれます。
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の被保険者期間が1年以上あること、老齢基礎年金の受給資格を満たしていることが要件です。
お尋ねの主婦に、老齢基礎年金の受給権があるとして、1年勤めると、その段階で特別支給の老齢厚生年金の裁定請求ができます。
まだ在職中でも構いません。
もちろん金額はわずかですし、在職老齢年金という形で調整(減額)も受けますが、年金を受け取ることができます。
退職すれば、フルの金額の特別支給の老齢厚生年金をもらえます。
65歳以降の老齢厚生年金は、被保険者期開か1ヵ月以上あること、老齢基礎年金の受給資格を満たしていることが、要件です。
ですから、仮に何かの理由で1年未満で退職したとしても、65歳を過ぎれば、老齢厚生年金を受け取ることができます。
【平成16年:事例研究より】