トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)
当社では新入社員に対し、年休を人社日の4月1日に5日、6ヵ月後の10月1日に5日を付与し、翌年4月1日に11日を付与しています。
4月1日に入社したAが、退職したいと申し出てきたのですが、その際、この5日の年休を消化してから退職したいといってきました。
入社1ヵ月足らずで退職する場合でも5日を与えなければならないのでしょうか。
【千葉 H社】
労基法第39条第1項は、「使用者は、その雇入の日から6ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定しています。
年休は、人社日から起算して、6ヵ月後に出勤串が8割以上の労働者に対して発生するものですが、初年度において法定の年休の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与する分割付与の方法も認められています。
つまり、①分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年休付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間を全期間出勤したものとみなす、②次年度以降の年休の付与についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げたと同じまたはそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること−を条件に分割付与ができます。
入社6ヵ月後に付与する10日については分割付与が認められていますので、ご質問のように、4月1日入社者に入社時に5日を付与し、法定の基準日である6ヵ月後の10月1日に残りの5日を付与することもできます。
この場合、次年度の基準日は本来翌年の10月1日ですが、初年度の10日のうち5日分について6ヵ月繰り上げていますので、6ヵ月繰り上げて4月1日に11日を付与しなければなりません。
ご質問の場合、入社時に与えた5日の年休は、法定の年休を繰り上げて付与したものですから、入社1ヵ月足らずで退職するという理由で与えないということはできません。
年休の権利は労働関係の存続している間は行使できる権利ですから、退職することが明らかな場合であっても、実際に退職するまでは請求された年休は与えなければなりません。
退職を目前に控えているということで与えないということはできません。
労働者から請求された時季に年休を与えることが、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者に時季変更権が認められていますが、「労働者の解雇予定日を超えての時季変更は行えない」(昭49・1・11基収第5554号)とされています。
退職日を超えての時季変更を行うことはできませんので、申出のあった5日の年休を全部与えなければなりません。
【平成15年:事例研究より】