日給プラス歩合給の営業社員、残業手当の算定基礎はどうなる【平成4年:事例研究より】

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営業社員を日給1万円、売上高に応じて歩合給を支払うことで雇用しました。

1日の所定労働時間は8時間です。

その月の所定労働日が23日(8時間×23=184時間)で、残業が10時間、歩合給が4万3000円であった場合、残業10時間にどのような時間外手当を支払えばよいのでしょうか。

歩合給は時間外手当の支給対象としなくて差し支えありませんか。

【千葉・U社】

時間外、休日、深夜労働に対して「通常の労働時間または労働日の賃金額の2割5分以上の率で計算した割増賃金」を支払わなければなりません(労基法第37条)。

通常の所定労働時間内に労働した場合に支払われることになっている賃金を基礎にして、2割5分以上の率をもって割り増した割増賃金を支払わなければなりません。

ただし、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は、割増賃金の基礎から除かれます。

ご質問の歩合給は、所定内労働と時間外労働を含めた全労働時間に対して支払われるものですから、割増賃金の基礎に算入しなければなりません。

割増賃金の額を計算するには、まず割増賃金の計算基礎となる1時間当たりの賃金額を算出するわけですが、日によって定められた賃金についてはその全額を1日の所定労働時間数で除した金額です。

出来高払制その他請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間)において出来高払制その他請負によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額です(労基法施行規則第19条)。

したがって、歩合給の割増賃金の基礎となる1時間当たり単価は、4万3,000円を、所定労働時間184時間と残業10時間を加えた総労働時間194時間で割ったものとなります。

割増賃金という文字は10割の賃金支払いも含むものであるとされており、たとえば基本給の1時間分をA、諸手当の1時間分をB、手当のうち除外し得る手当の1時間分をC、時間外労働時間数をDとすれば、時間外労働についての賃金総額は、 X=(A十B-C) X D X 1.25 となります。

しかし、出来高払制その他の請負制によって賃金が定められている場合については、時間外労働に対する時間当たり賃金、すなわち1.0に該当する部分は、すでに基礎となった賃金総額の中に含まれていますから、加給すべき賃金額は計算額の2割5分以上をもって足ります。

ご質問の場合のように、日によって定められた賃金と歩合給(出来高払制その他請負制によって定められた賃金)よりなる場合は、日給と歩合給それぞれについて1.時間当たり単価を算出し、2.これに1.25以上(歩合給については0.25以上)を乗じ、3.さらに時間外労働の時間数を乗じて算出した金額を合計した金額が割増賃金の額となります。

ご設例で、具体的な算出方法を示すと次のようになります。

具体的な計算例
  • 日給:10,000円
  • 歩合給:43,000円
  • 所定労働時間:8時間
  • 総労働時間:8×23日=184時間 残業 +10
時間外割増賃金
  • 10,000円/8×1.25=1,562.5円
  • 43,000円/194×1.25=221.6円
  • 1,563円+ 222円=1,785円
  • 1,785円×10=17,850

【平成4年:事例研究より】