従業員Aは近く60歳を迎え、定年退職となります。
Aは、かなり前から高血圧のため月に2〜3回通院し、投薬を受けています。
退職すれば、被保険者証を回収し、資格喪失届に添付して社会保険事務所に返納しますが、退職後も引き続き健康保険で治療できるのでしょうか。
治療できるとしたらいつまで(何年間)治療できるのでしょうか。
【広島・S社】
健康保険の療養の給付(保険診療)を受けられる期間は、被保険者であれば期間の制限はありません。
被保険者資格が存続している限り、何ら期間の制限はなく、健康保険で治療できます。
しかし、退職後も引き続き健康保険で治療を受けるには、一定の要件が必要であるとともに、治療を受けられる期間にも5年間という制限があります。
被保険者がその資格を喪失した際に、保険治療を受けていれば、その病気に限って退職後も引き続き保険診療が受けられます。
これを受診するには、被保険者の資格を喪失した日の前日まで継続して1年以上被保険者であったことが必要です。
1.退職の際に療養の給付を受けていたこと、2.退職まで継続して一年以上被保険者であったことの二つの要件を満たしていれば、資格喪失の日から10日以内に、「継続療養受給届」をそれまでに加入していた健康保険の保険者(社会保険事務所または健康保険組合)に提出し、「継続療養証明書」の交付を受け、これにより資格喪失後の継続療養を受けます。
この手続きにより継続療養を受けている者が、資格喪失の際に傷病手当金を受けていた場合は、引き続いて傷病手当金の支給を受けることができます。
退職後、継続療養が受けられる期間は、療養の給付開始日(初診日)から5年間です。
退職してから5年間ということではありません。
たとえば、同一の疾病に関し、退職まで2年間保険診療を受けていたとすれば、あと3年間は保険診療が受けられるわけです。
ご質問では、。かなり以前から高血圧のため保険診療を受けておられるとのことですから、初診日から5年以内であれば、5年の範囲内で継続療養を受けることができます。
継続療養の支給期間内であっても、その疾病がなおれば継続療養は打ち切られます。
また、初診日から5年を経過したときは、もはや継続療養は行われません。
【平成4年:事例研究より】