当社は、勤務時間は通常の労働者と同じ8時間で、週2日勤務のパートタイマーを雇用しています。
やむを得ない事情でそのパートタイマーを平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って解雇することになりました。
最低保障額を平均賃金として、その30日分を計算すると、毎月の賃金より高くなります。
それでも30日分必要となるのでしょうか。
【東京・A社】
使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労基法第20条)。
ご質問のような週2日勤務のパートタイマーであっても、解雇するには、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければなりません。
予告をせずに解雇する場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額です(同法第12条第1項)。
この3ヵ月間は、賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算した期間となります。
賃金が日給制や時間給制の場合で、所定労働日数が少ない場合には、この算定方法で計算すると、平均賃金が著しく低くなってしまうおそれがあります。
そこで、同条第1項ただし書で、平均賃金の最低保障額を定め、原則の算定方法で計算した金額が最低保障額に満たない場合には、最低保障額を平均賃金とすることとしています。
具体的には、「賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60」とされています。
ご質問のパートタイマーについて、時間給1,000円で、日額8,000円、直前3ヵ月間の総日数92日、直前3ヵ月の勤務日数26日、直前3ヵ月に支払われた賃金総額を20万8,000円として、解雇予告手当の額を計算してみます。
原則的な算定方法による平均賃金額は20万8,000円÷92=2,260.86円となります。
最低保障額は20万8,000円÷26×60/100=4,800円 となります。
原則的な算定方法より最低保障額が高いため、平均賃金は最低保障額である4,800円となります。
したがって、解雇予告をせずに解雇する場合には、少なくとも14万4,000円(4,800円×30日分)の解雇予告手当を支払わなければなりません。
週2日の勤務ですから、月の勤務日数は8〜9日で、毎月の賃金は6万4,000円〜7万2,000円でしょうから、解雇予告手当は月々の賃金より約2倍も高くなります。
このことに疑問を感じておられるようですが、週2日の勤務でも平均賃金の30日以上ですから、やむを得ないことです。
【平成16年:事例研究より】