労基法第20条のただし書きの労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合、労基署長の認定を受けなければなりませんが、この認定は解雇の意思表示をする前に受けなければならないのでしょうか。
1日も早く解雇したい場合、事後認定で処理してもかまわないでしょうか。
【神奈川 Y社】
労働者の責に帰すべき事由により解雇予告、予告手当の支払いなくして解雇する場合には、所轄労基署長の認定が条件とされています。
「労働者の責に帰すべき事由」とは、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほど重大または悪質な義務違反、背信行為が労働者に存する場合であって、労働者の地位、職責、継続勤務年数、勤務状況等を考慮したうえ、使用者に30日前に解雇の予告をなさしめることがその事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定されます。
たとえば、重大な秩序違反を犯し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合とか、長期間無断欠勤して出勤の督促に応じないとか、会社の信用を著しく傷つける行為があり、従業員としてとどめておくことができない場合などです。
解雇予告除外が認められる「労働者の責に帰すべき事由」の存否については、「解雇予告除外認定申請書」により所轄労基署長の認定を受けなければなりません。
この認定は、解雇の意思表示をする前に受けなければなりません。
認定を受けないで即時解雇の意思表示をし、その後認定を受けるため労基署に申請し、労基署長の認定を得た場合には、即時解雇してもやむを得ない事実は解雇の意思表示がなされた当初においてすでに存在していますから、その効力は即時解雇の意思表示がなされた当時にさかのぼって発生します。
行政解釈は「法第19条及び第20条にある認定は、原則として解雇の意思表示をなす前に受けるべきものであるが、法第19条第1項ただし書及び法第20条第1項ただし書の認定は、ただし書に該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には、使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合は、 その解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される。
なお、使用者が認定申請を遅らせることは、法第19条又は第20条違反である」(昭63・3・14基発第150号)としています。
【平成15年:事例研究より】