2事業場に勤務する者には、その労働時間を通算して1日8時間を超えた場合には割増賃金を支払わなければならないということですが、たとえばA事業場で7時間を、その後B事業場で2時間働く場合、ABいずれの事業場で割増賃金を支払うのでしょうか。
また、A事業場で2時間、B事業場で7時間という場合はどうなるのでしょうか。
【新潟 T社】
労働者が異なる事業場、たとえばA事業場とB事業場で働くという場合その両者の労働時間を通算し、通算の結果、法定労働時間(1日8時間)を超える場合には、超えた時間に割増賃金を支払わなければなりません。
労基法第38条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定については通算する」と規定しています。
1日のうちにA、B両事業場で働く場合には、両方の労働時間を通算して法定の8時間以内にとどめておかなければならないわけです。
そして、通算8時間を超えて労働させるには、36協定の手続きが必要ですし、8時間を超えた時間外労働に対しては割増賃金を支払わなければなりません。
この場合、時間外労働について割増賃金を支払わなければならないのはA、Bいずれの事業場かということですが、行政解釈は、「法定時間外に使用した事業主は法第37条に基づき、割増賃金を支払わなければならない」(昭23・10・14基収第2117号)としています。
法定時間外において使用した事業主ですから、1日のうちA事業場で7時間働き、その後にB事業場で2時間働いたという場合、法定8時間を超えて使用した事業主はB事業主であり、B事業主が時間外1時間に対して割増賃金を支払わなければなりません。
この行政解釈を推しすすめれば、割増賃金を負担するのは、1日において後で使用する事業主ということになります。
通常の勤務をする7時間のB事業場の労働者が、その所定勤務に就く前に、他のA事業場で2時間、たとえば早朝の新聞配達などをして、その後B事業場の勤務に就いたとすると、8時間を超えた1時間に対して割増賃金を支払うのはB事業主となる不合理がでてきます。
B事業主が何ら関与しないところに割増賃金の支払義務が生じるのは不可解なことで、割増賃金を支払うのは、時間的に労働契約を後で結んだ事業主と解すべきであると考えられます。
なぜなら、後で労働契約を結ぶ事業主は、その労働者がほかの事業場で働いていることを承知して、少なくとも確認できる立場にあって、労働契約を結んだものであるからです。
ただし、A事業場で4時間、B事業場で4時間働いている場合、A事業場の事業主が、この後B事業場で4時間働くことを知りながら労働時間を延長(たとえば早出勤務)したときは、A事業場の事業主が割増賃金を支払います。
実際上は、どちらの事業主が時間外労働をさせたかで、判断されることになります。
【平成15年:事例研究より】