当社では、事務部門に4月1日からフレックスタイム制を導入することになりました。
毎年、4月1日から翌年3月31日までを有効期間とする36協定を締結して、労基署に届け出ていますが、36協定では1日と一定期間の両方について協定することになっています。
1日での延長時間の決めようのないフレックス制適用者の36協定は、どのように協定するのでしょうか。
【岡山・Y社】
フレックスタイム制を採用するには、(1)就業規則で始業・終業の時刻を労働者の決定にゆだねることを規定します。
労使協定で、対象となる労働者の範囲、清算期間(1ヵ月以内)、清算期間中の総労働時間(清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が週40時間以内)、その他厚生労働省令で定める事項を協定する―ことが必要です。
その他厚生労働省令で定める事項は、労基法施行規則第12条の3で(1)標準となる1日の労働時間、(2)コアタイム(必ず勤務しなければならない時間)を設ける場合にはその開始と終了の時刻、(3)フレキシブルタイム(選択により勤務することができる時間)を設ける場合にはその開始と終了の時刻―とされています。
これらの項目を協定し、就業規則に定めたときは、労働者が選択したところにより、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させることができます。
フレックスタイム制は、自分の意思により始業・終業の時刻を自由に決定する勤務ですから、1日の労働時間が労使協定で定めた標準労働時間を超えたり、それに満たなかったりします。
通常の労働時間制度ですと、1日単位で時間外労働が発生しますが、フレックスタイム制の労働時間は1日ではなく1ヵ月など清算期間単位ですから、清算期間を通算して法定労働時間を超えた時間が時間外労働となります。
したがって、時間外労働の計算方法は、清算期間ごとに、清算期間における法定労働時間の総枠(40×清算期間の暦数÷7)を超えた分となります。
清算期間を1ヵ月とするフレックスタイム制であれば、法定労働時間の総枠は30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間、28日の月は160時間となります。
法定労働時間の総枠を超えて労働させるには、当然、時間外・休日労働協定(36協定)が必要となりますが、清算期間における時間外労働時間数を協定すれば足り、1日あたりの時間外労働時間数を協定する必要はありません。
行政解釈は「フレックスタイムを採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間であること。
したがって、法第36条第1項の規定にある協定についても、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるものであること」(昭63・1・1基発第1号、平11・3・31基発第168号)としています。
【平成16年:事例研究より】