当社は過半数を代表する労働者代表(組合なし)と三六協定を締結して届けています。
しかし、技術者のなかには、三六協定(目安時間)以上の残業を行う者があり、やむを得ず割増賃金をその時間どおり支払っています。
技術者は新技術、新製品の研究開発の業務ですから、目安時間の適用除外で何時間残業(青天井)させてもよいのでしょうか。
【静岡・M工業】
時間外・休日労働の協定(三六協定)は、使用者が、適法に時間外または休日労働を行わせる枠を定めるものであり、いったん枠が設定された以上、この枠を超えて労働させることは許されないものであり、もし行えば違法な時間外労働、休日労働となります。
三六協定では、1日の労働時間の最高限度とともに、1日を超える一定期間の時間外労働の最高限度も必ず協定しなければなりません。
たとえば1日5時間、月50時間と協定している場合、1日5時間の範囲内であっても、月50時間を超えて労働させることになれば、その時点で違法となります。
過長な時間外労働の改善を図るため、一定期間についての時間外労働の目安時間(労基法第36条の協定において定められる1日を超える一定の期間について延長することができる時間に関する指針)が示されています。
1日を超える一定期間は、1週間、1ヵ月、3ヵ月など三六協定によって定められるものですが、指針では、たとえば1週間15時間、1ヵ月50時間、1年450時間という時間外労働の目安時間を示しています。
この指針は、三六協定で定める時間外労働の上限について指導基準を定めたものであり、法的義務はありませんが、三六協定の締結に当たっては時間外労働の上限をこの目安時間の範囲内にするよう努めなければなりません。
労基署では、三六協定の届出、受理に当たって、この指針の目安時間を基準とした指導を行っています。
目安時間は、全業種について全国統一的に統一されますが、業務の性格から目安時間の適用になじまない分野もありますので、一定の事業、業務を適用除外しています。
目安時間が適用されない事業、業務は次のものです。
1.工作物の建設等の事業 2.自動車の運転の業務 3.新技術、新商品等の研究開発の業務4.労働省労働基準局長が指定するもの ご質問の技術者は、新技術、新商品の研究開発の業務に従事する者のようですから目安時間は適用されず、目安時間の範囲内にどうしても収めることができないのであれば、技術者については目安時間を超える時間外労働の上限を協定すべきです。
この場合にも、必ず時間外労働の上限としての時間を協定することが必要で、1日の時間外労働の最高限度、1日を超える一定期間、たとえば1ヵ月の時間外労働の最高限度を70時間というように協定しておかなければなりません。
また、技術者の業務が新商品、新技術の研究開発の業務で、その業務の性質上その業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、その業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしないことになる業務であれば、裁量労働のみなし労働時間制の労使協定をすることが考えられます。
裁量労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、労基署長に届け出なければなりません。
【平成4年:事例研究より】