残業続きの社員から請求されたら代休を認める義務あるか【平成15年:事例研究より】

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残業時間の多くなった従業員から代休の請求がなされましたが、それを拒否しました。

他社では、残業時間が多くならた場合、本人の請求があったら、代休を与えているそうですが、本人の請求があれば与えなければならないのでしょうか。

もし、請求どおり代休を与えた場合、残業時間から代休日の所定労働時間を差し引き、残りの残業時間に残業手当を支払うことでよいのでしょうか。

【秋田 M社】

時間外・休日労働に関する協定(36協定)により法定休日労働をさせた場合、割増賃金(135%)を支払う代わりに週休日は消滅しますから、代休を与える必要はありません。

行政解釈は「問 労働基準法第36条第1項によって休日労働とした労働者に対しては以後必ず代休を与えなければならないか」「答 労働基準法第36条第1項において、『前条の休日に関する規定にかかわらず』と規定してあるから、設問の場合においては代休を与える法律上の義務はない」(昭23・4・9基収第1004号、平11・3・31基発第168号)としています。

このことは、時間外労働の場合も同様で、36協定により時間外労働を行わせ、その時間外労働が多くなっても、代休を与える法律上の義務はありません。

一般に代休といわれる制度は、休日労働や長時間の時間外労働、深夜労働が行われた場合に、その代償措置として、以後の特定の労働日の労働義務を免除するものです。

代休は、法律上認められた制度ではなく、労働協約、就業規則の定めによってはじめて代休の付与を求める権利が生じます。

時間外労働時間を積み立てて、その時間が1日の所定労働時間に達した場合、労働者の希望により代休を与えている会社もありますが、代休を与えることが労働協約、就業規則などで制度化されていて、はじめて認められるわけですから、代休制度がない場合には、36協定による時間外労働が多くなったという理由で代休を請求しても、拒否して代休を与えなくても差し支えありません。

代休の請求があり、もし使用者が代休を与えたとしても、時間外労働時間数から代休の日の所定労働時間を差し引き、時間外労働を代休で相殺することはできません。

代休を与えることによって、現に行われた時間外労働が時間外労働でなくなるものでありません。

1ヵ月集計したすべての時間外労働に割増賃金(125%)を支払わなければなりません。

代休の日は就労しているわけでありませんから、労働協約、就業規則の定めで無給とすることができます。

無給であれば、代休の日の賃金を差し引くことができます。

差し引きの結果、代休により通常の賃金(100%)の部分が相殺された形になり、代休相当分の時間外労働に対しては、時間外労働の割増分(時間当たり賃金の25%)のみを支払えばよいことになります。

【平成15年:事例研究より】